『西郷どん』銀でヒ素を検出できるのは本当?江戸末期に手に入るものだったの?

大河ドラマ『西郷どん』で島津斉彬(渡辺謙さん)が毒を盛られました!

その毒とはヒ素。

そしてヒ素は、蘭方医・橋本左内(風間俊介さん)がいとも簡単に検出されました!

ヒ素は本当に銀で簡単に検出出来るのでしょうか?

江戸時代末期に、手に入るものなのでしょうか?

ヒ素は本当に銀で簡単に検出出来るのでしょうか?

和歌山カレー事件で日本中から認知された「ヒ素」。

ヒ素は私達が通常食べる「ひじき」や「牡蠣」などにも含まれている半金属の物質です。

つまり、食物の中に含まれる「ヒ素」は、人間にとって問題ないのですが・・・「毒」として使われるヒ素は、どのような症状がでるのでしょう?

毒物「ヒ素」でどんな症状が出る?

食物に含まれる以上に摂取すると、次のような症状があります。

急性中毒では嘔吐や腹痛,下痢などの消化器症状,呼吸困難や気管支炎,急性肺水腫などの呼吸器症状,皮膚炎,鼻腔の潰瘍,鼻中隔穿孔を起こし(→鼻中隔),治りにくい。 慢性中毒では,胃腸障害のほかに神経症状や皮膚変性を伴い,後遺症が生じることが多い。

『西郷どん』では、突然の発熱?倒れちゃう?

という症状で、ヒ素中毒だったのかよくわかりませんでしたね。

ではこのヒ素、銀で簡単に検出できるというのは本当でしょうか?

そもそも銀が黒くなる理由は?

銀は金属の中でも安定しているからこそ、昔からアクセサリーや食器に使われてきました。

・・・・・

ですが!

銀のアクセサリーは、しばらくすると表面が黒くなりますよね?

あの銀の黒ずみは、銀がイオン化しやすくて、水分中の二酸化硫黄、空気中の硫化水素と反応することで、銀の表面に硫化銀の皮膜を作っているのです。

この皮膜は薄いものから厚いもので色が違います。

薄い⇨⇨⇨⇨⇨⇨⇨⇨⇨⇨厚い
薄茶色⇨青色⇨こげ茶色⇨黒色

 

銀にを変色させる二酸化硫黄や、硫化水素の中で、銀に皮膜を作らせているのは「硫黄」です。(硫黄成分を含む温泉に、銀のアクセサリーをしたまま入ったらダメですよ!もったいない!!!)

 

でも「ヒ素」そのものには、銀を黒くする成分は入っていません。

じゃあ、なぜ『西郷どん』では「ヒ素」を銀で検出できたのでしょうか?

ヒ素が銀で検出できる理由

ヒ素には色も臭いも味もありません。

しかし・・・

毒物としてのヒ素は、硫砒鉄鉱から精製して作られてきました。

硫砒鉄鉱には19.7%の硫黄が含まれます。

そして硫砒鉄鉱を焼くことで「ヒ素」が分離できるのです。

ここで!昔は硫砒鉄鉱からヒ素を精製する時、硫黄成分が残ってしまっていたんです!

だから『西郷どん』では、ヒ素が含まれる焼き魚に、銀のかんざしを触れると、黒く変色したんですね。

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ヒ素は江戸時代末期に手に入る?

ヒ素の精製(精度は悪いけど…)に成功したのは、13世紀。

マグヌスというキリスト教神学者で、錬金術をやっていたマッドサイエンティスト(?)が、ヒ素を単体で取り出すことに成功したのです。

 

そして、ヒ素の毒性が知られるようになってからは、世界中で人間の恨みとか憎しみに利用されてきたのです。

つまり、江戸末期に「ヒ素」を手に入れることは、それほど難しくなかったと思います。

そもそも戦国時代後期から世界の銀の3分の1を産出したという、島根県の石見銀山では、ネズミ取りの薬「殺鼠剤」として、亜ヒ酸が使われていました。

つまり、西郷どんが活躍した江戸時代末期には、ヒ素は簡単に手に入るものだったのです。

江戸時代のヒ素検出方法

江戸末期の19世紀になると、イギリス人のマシューさんが、簡単にヒ素を検出する方法を見つけてしまいました!

そのヒ素の検出方法は、銀の変色によるものではないので『西郷どん』で登場したヒ素の検出方法とは違います。

容器に純粋な亜鉛塊を入れ、希硫酸を注ぐと水素を発生する。これにヒ素化合物を含む試料溶液を滴下する。そうするとヒ素化合物は水素により還元されて、水素化ヒ素を発生する。

以下略!

上記の方法の続きもあるのですが、実際にヒ素を検出するには、それなりのラボが必要。

とは言え、精製が不十分なヒ素には、銀のかんざしで十分「ヒ素」を検出できたのかも!?